初対面の人に本を紹介してイキリたい時に発生する読み合い
この前先輩と飲みに行った時の話。
居酒屋で、お互いお酒も飲んでるということもあって隣に居た女の子2人組に声をかけてちょっとした相席みたいな状況になった。
僕自身仕事柄初対面の人と話すことは多分苦手では無いんだけど、初対面の女の子(しかも結構かわいい)と突然バチバチのフルコンタクトになることは全く想像してなかったから内心何喋ろうかとどぎまぎしていた。
とは言えせっかくの突発的な"大当たり特化ゾーン"を引いたという事もあり、なんとかしてどうにかしてやろうっていう思いはあり、会話の中でどっかでカマしてやろうと決心はしていた。
まずは簡単な自己紹介パート。お互いの出身とか今の仕事とか、住んでる場所みたいなジャブの会話を数ラリー続けてお互い持っている武器とポテンシャルを把握する。未だに歯牙にかけるような話題は無い。そんな中、女の子1人からふと質問が来る。
「◯◯さんって本とか読みますか?」
来た。先読み予告である。僕にはもう文字も赤く見えていた。
女の子はすべからく知的な男性が好きなものである。ここでイキれればほとんど勝利は目前。一見取り留めない話題かと思いきや、案外の本命。言うならば静謐なキラーパスなのである。
まず前提条件として僕はあんまり本を読まない。というか読めない。本を読む事をカッコイイと思い続けて大学3年生の頃から週2.3で池袋のジュンク堂に通い詰めて買った1ページも読んでない本が我が家に30冊はある。なんだかんだ本棚の1/3くらいしか読んでないという恐ろしい障害者である。
そんな少ない引き出しの中、どの系統、どんなジャンルの本を紹介すればさりげなく滲み出る知性をアピールすることが出来るだろうか?
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/12/25
- メディア: 文庫
- 購入: 84人 クリック: 1,493回
- この商品を含むブログ (719件) を見る
大分前にブログにも書いたことがある森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』。僕もこれはTwitterでかわいらしい女の子に勧められて読んで、めちゃくちゃ面白くてここから森見登美彦作品にハマったという経緯がある本。
僕のこれまでの経験上、女の子は難しい本をあんまり好まない(大偏見)。相席女も携帯小説で活字に触れた世代ということもありここはストレートに攻めるのが吉か。
まず内容が最強に面白くて、映画も観てる僕は結構本編についても語れるし、女の子から勧められたという太鼓判もある本ということで一番手堅い選択肢であるのは間違いない。
選択肢2.原田マハ『モダン』
これはある種本筋を切った裏の選択肢である。
なぜなら僕はこの本を完走していないからだ。
触りしか読んでないから話がほとんど分かってないけど美術系の話だったような気はする。原田マハ自体絵画とか美術を軸にした小説が多いしたぶん合ってる。
僕は女にモテるために今絵画を勉強していて、美術検定も3級までは持っている。正直受けりゃ取れる資格だけどうっすい知識は持ってるから、絵画の知識を語る事によってイキろうという、モテの軸をズラしていく作戦だ。
大本命の本の中身を紹介して盛り上がるというより、
「この表紙の絵画、何か知ってる?これはアンリ・マティスのダンスって絵なんだよ。マティスっていうのはね、、」
といったように、自分のストロングポイントを押し付けていく【軸ズラしモテ】で攻めるべきだろうか。
選択肢3.三島由紀夫『美しい星』
大学3年の後期、学生として円熟期を迎えた際に「純文学ってなんかかっこいい」というめちゃくちゃバカっぽい理由で三島由紀夫をキャンパスバッグの中に常に携えていた時期がある。
実際はとにかく文字が頭に入ってこず池袋のサンマルクで三島をテーブルに置いて周りを牽制しながら延々と携帯をイジっていただけの時期なのだが、その中でも珍しく完走してしかも映画まで観に行った作品。(映画はクソほどつまらなかったけど)
三島由紀夫という事もあって硬派な本読みのイメージを刷り込ませるプラス効果を期待出来るが、問題としては本の内容自体がブッ飛んでいるということのみである。
主人公とその家族が突然自分は宇宙人であるという自覚が生まれて、冷戦構造から来る世界の核戦争を止めようと画策するという、ただやばいだけの涼宮ハルヒとSOS団の物語みたいな感じで半ばパラノイアじゃねえのかこいつらって読者が思ってたら結末でちょっとだけ救われるみたいな、すごい読む人を選ぶ小説だからここで安易に相席女に勧めて後々本を読んだらとてつもなく危険な思想を持ってるのかと疑われる可能性も無くは無い。
しかし実際僕の薄い学生時代の中に限って言えば1番心打たれた小説であることは間違いなく、自分を理解して貰うには最も最適な本であることには間違いはない。
結局僕は自慢の美術トークを捨て、選択肢1と選択肢3の2つをチョイスした。(別のくだりでしっかり美術イキリもしたけど)
その後もしばらく話してからLINEを交換してその場は別れた。
後に相席女からLINEで聞いた話だと、「その歳で人に勧める本があるってだけですごいね!」とのことだった。
本の中身じゃなく、しっかりと内容を語れて、人に勧めることが出来た段階である種この試練はクリアだったのだ。
なるほどなァ〜〜・・・・・・ やっぱ本って、深けェよなァ・・・・・
ただ「読書」という共通の趣味が合致しただけでただ単に運が良かっただけかも知れないが、読者諸賢はもし見ず知らずの女の子とお酒を飲むことがあったら、よくその内容を推敲し、それでいて自らの内面を表現できる本を1つは頭に置いておいた方がいいかも知れない。
今はお互いのお勧めの本を読んで進捗を報告しあっているが、まだ連絡は途絶えていない。
おわり